2006.02.24

AM/ED records、はてなダイアリー移籍のお知らせ

ご無沙汰しております。AM/ED records主宰のTuckyでございます。

2005年の約1年間訳あって休眠しておりましたAM/ED recordsですが、このたび配給元を@nifty/ココログからはてなダイアリーに移し第2期AM/ED recordsとして再開する事になりました。尚、このココログ版第1期AM/ED recordsもしばらくはこのまま残す事といたします。

以上、お手数をおかけしますが、これからもAM/ED recordsを宜しくお願い致します。

AM/ED records ll
http://d.hatena.ne.jp/amed-rec/

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.11.14

新しい試みの数々、その結果、名盤確定? ー 矢野顕子「ホントのきもち」

5ヶ月近くお休みしてスミマセンでした。
本職の方でいろいろありまして更新は「Drifting Away」の方だけで手一杯でした。あとこの間音楽をほとんど聴いていませんでした。しばらくは不定期かとは思いますが、とりあえず復活させていただきます。

で、復活第一弾は10月27日に発売になった矢野顕子の新作「ホントのきもち」です。今回は全曲レビューというカタチをとる事にしました。この「ホントのきもち」はレコード会社を移籍しての2年半ぶりのオリジナルアルバムという事になります。今回の目玉は何といっても全10曲中半分をくるりの岸田繁とのコラボレーションだという事でしょう。僕もこの部分に一番期待していましたし、実際聴いてみて期待以上の出来であると思います。そして岸田繁を介して出会ったという京都在住のレイハラカミとのコラボレーションもレイハラカミ以外の何者でもないサウンド。そして年末のさとがえるコンサートでお馴染みの矢野顕子バンドでの録音、以外に矢野顕子バンドでの録音って今までそうなかったんですよね。それらに矢野顕子の原点とも言えるピアノ弾き語りが加わりすべてがよい相乗効果を生み出しています。とにかく今回は新しい試みが多いです。それだけとても新鮮に聴けると思います。

1. 行かないで(作詞・作曲:矢野顕子+岸田繁/Produced by 岸田繁)
矢野さんのアルバムはいつも前向きな曲ではじまる事が多いのですが、今回はとても切ないはじまりであります。ペダルスチールの音色がその切なさに拍車をかける。岸田繁の奏でる12弦ギターやバンジョーの音色が何かアイリッシュっぽく聞こえたりものする。
 
2. N.Y.C.(作詞:矢野顕子/作曲:岸田繁+矢野顕子/Produced by 岸田繁)
以前矢野さんが何かの雑誌のインタビューで今気になるアーティストは?という問いに「くるり」と「クラムボン」を挙.げていたのですが、この曲はまさにクラムボンでしょ。矢野顕子とくるりによるクラムボンごっこ(笑)。ザクザクッと刻むようなピアノや歌い方はまさに原田郁子みたい。矢野さんとクラムボンは12月に一緒にライブするんだよなー。

3.まっ赤なビー玉(作詞・作曲:岸田繁/Produced by 岸田繁)
矢野顕子の手の加わっていない、100%岸田繁による提供曲。確かに一番くるりっぽい感じ。これは偏見かもしれないけれど「まっ赤」という言葉は何だか歌謡曲っぽい。そして「ビー玉」はすごく下町っぽい感じ。矢野顕子のイメージには合わないタイトルだなと最初思ったけど、今では矢野顕子かくるり以外誰がこの歌を歌える?という程に岸田繁の矢野顕子像が反映された一曲だと思います。

4. House of Desire (Burnin' Down)(作詞・作曲:矢野顕子/Produced by 岸田繁)
これは矢野顕子とくるりによるティンパンごっごといった感じ(笑)特にリズムが。ティンパンのアルバムに入っていそうな曲だ。

5. おいてくよ(作詞:矢野顕子+岸田繁/作曲:岸田繁+矢野顕子/Produced by 岸田繁)
矢野さんが87年に出した「グラノーラ」というアルバムに「自転車においで」という糸井重里の作詞、佐野元春とのデュエットによる曲があり、矢野さんが自身この曲を超えるのは難しいと言う程の名曲なのですが、この「おいてくよ」はひょっとしたら超しちゃったんじゃない?と思う程僕は名曲だと思いますよ。

6. Night Train Home(作詞・作曲:矢野顕子)
10曲目に入っている曲のピアノ弾き語りによるアコースティックヴァージョン。僕自身この曲をまず弾き語りで聴いたのでこのイメージで収録された事はとてもうれしい。その時は確か最後に駅のSEが流れていたな。

7. Too Good To Be True(作詞・作曲:矢野顕子/Produced by レイハラカミ)
今までになかった程チャーミングな曲。このチャーミングさにレイハラカミのトラックが合っているんだなー。

8. Our Lives(作詞・作曲:矢野顕子/Produced by 矢野顕子)
さとがえるコンサートでもお馴染みのアンソニージャクソンとクリフアーモンドに加えギター(オズノイ)を加えた矢野顕子バンドによる録音。当然さとがえるコンサートを楽しんでいるような錯覚に陥る。録音も素晴らしい。何だかメッセージ性の強い歌であるみたいだけど、これはアメリカに住んでいる人でないとわからない問題なのかも。僕は完全に理解出来ていないから。

9. Nobuko(作詞・作曲:矢野顕子/Produced by 矢野顕子)
これも「Our Lives」同様、矢野顕子バンドの録音で何やら強いメッセージを感じる。Nobukoという実在した人物を歌ったもので矢野さんはその女性の事が大好きだったそうで・・・そしてその女性は今年亡くなったそう。なのでこれはDedicateの曲なんですね。しかし矢野顕子バンドの奏でるアンサンブルは本当に素晴らしいです。

10. Night Train Home(作詞:矢野顕子+岸田繁/作曲:矢野顕子/Produced by レイハラカミ)
ベストトラック揃いの「ホントのきもち」ですが、その中でもベスト中のベストはやはりこの曲ではないかと。「Drifting Away」ではこの曲単体で取り上げましたが、この曲は青森出身の矢野さんが昔東京との往復によく利用していたという寝台列車の廃止にショックを受け作ったというもの。なのでこれもある意味Dedicateの曲ですね。窓の外を雪が舞う叙情的なシーンから中盤は岸田繁のペンによると思われる専門的な言葉が続き、レイハラカミによるトラックも鉄道の疾走感がよく出ていてXTCの「Train Running Low On Soul Coal」にも勝る出来(笑)
「ラーメンたべたい」という曲はそんな大ヒットした曲ではないけれど「ラーメンを題材にした曲」として世間的にも広く知られているようにこの曲も「鉄道を題材にした曲」としてもっと世間に広まってほしい。いや、せめて鉄道マニアの間だけでもいいから(笑)

矢野さんのアルバムではよく「峠のわが家」と「Super Folk Song」が“名盤”と言われていますが、確かに僕もそう思います。「峠のわが家」はスタジオ録音の中では最高峰の完成度だと思うし、「Super Folk Song」は後にも続く弾き語りアルバムはあれど一番最初のインパクトという意味では忘れる事は出来ないものです。そしてこの「ホントのきもち」もそれに続く“名盤”と語り継がれる可能性はとても高いと思います。

hontonokimochi.jpg
矢野顕子「ホントのきもち」(2004/YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS)

| | Comments (2) | TrackBack (0)

2004.06.23

AM/EDアーカイブス(2)〜パッとしない男のパッとしない、キリンジ「For Beautiful Human Life」レビュー

AM/EDアーカイブス(2)は、昨年の10月3日「ポトフ亭エレクトリックアコースティック」に掲載したキリンジの5枚目「For Beautiful Human Life」の超私的レビューです。このアルバムはいつものキリンジとはちょっと違う。何せ「どれも何となくパッとしない人間が主人公」という事で、パッとしない男と言えば僕の事でありまして(笑)いつも以上に感情移入しやすい内容となっております。(←僕の場合)

----------

■奴のシャツ(作詞・作曲:堀込高樹)
1曲目にして個人的には今回のアルバムのベストトラック。春に出た「スウィートソウルep」がドアを開けた途端、トロ〜っと甘〜く気持ちよくさせられたのとは対照的に、「おら〜、こっちこんかい!」と言わんばかりにいきなり胸ぐらつかまれ中に放り込まれるような感覚があります。(←なんちゅう表現でしょう...)うねるベースが先導し、生々しいタイトなドラム、ストリングス系のキーボードの音色が何ともカッコイイ、キリンジにしては珍しい結構ストレートなロックサウンドなんだけどコーダの部分が何かを賛美するようなコーラスの多重録音のようになっていて美しさもまた格別。また歌詞がすごいんだ。僕はこの歌詞に共感できるんだ。親戚付き合い大嫌いだし、遺産でしのいでいた時期もあったような...(笑)。「ボタンを掛け違えたっま年をとるのは恥ずべきことだ。」ってすごいよね。今度甥っ子に言ってみようかな(笑)

■カメレオンガール(作詞・作曲:堀込泰行)
先行シングル。僕にしては珍しくなかなか体に馴染んでこなかったキリンジナンバー。だけど今はかなり好き。「ディディディ〜ダバダバ〜」とか一緒に歌ってるし(笑)
ブンブン鳴っている重低音なシンセベースと独特なエコー処理が印象的。 かわいい曲なんだけど何だか重たい。歌詞は最初何だかよく理解できなかったけど、これはキリンジ流“サイケデリック”なんだろうな、と。“七色”“心の穴に菓子パンをねじ込み”“耳の穴にボサノバを流し込み”なんて表現が何ともおサイケ。

■僕の心のありったけ(作詞・作曲:堀込高樹)
“ありったけ”っていい言葉ですよね。言葉の意味もさることながら発音がいい。その言葉を“ありったけを〜、あり“い”たっけを〜”を丁寧に発音しているのが微笑ましい(笑)。寸又峡(すまたきょう)を「す“ん”またきょう」と呼ぶようなものか?(←違います。)
今回のアルバムは非常に重たい空気感のあるアルバムなんだけど、ここだけ「ふっ」と軽くなる印象がある。ストリングスの美しいミディアムスローなラブソング。従来のキリンジのイメージにはこれが一番近いかもしれない。「スウィートソウルep」に入ってもまったく違和感がない。多分女の子たちはこの曲に胸キュン(←死語)なんだろうな〜。

■愛のCoda(作詞・作曲:堀込高樹)
「スウィートソウルep」収録曲。当初は「ブラインドタッチの織姫」を入れようとしたらしいけどこの重たい空気のアルバムには収まらないという事で「愛のCoda」になったという。確かにこの重厚なムードがアルバム全体を更に重たいものにしている。「スウィートソウルep」にはインスト(カラオケ)も入っているが、歌うのかなり難しい曲だと思う。

■繁華街(作詞・作曲:堀込泰行)
この曲を最初に聴いたのは確か「Paper Drivers Music」の発売記念ライブだったと記憶している。という事はもう5年前。以後もライブでちょくちょくやっていたファンの間では結構知られてナンバー。確かライブのMCで「録ったけど今回は入らなかった」と言っていたので「PDM」のアウトテイクだったのだろうと予測される。でも「PDM」の晴々しい雰囲気に夜の雰囲気がするこの曲はハマらないだろう、と。「For Beautiful Human Life」に於いてようやく居場所を見つけ陽の目をみたナンバー。当然今回録り直していると思います。サックスの音色が夜な夜なアダルトな雰囲気を醸し出してますね(笑)

■ブルー・ゾンビ(作詞・作曲:堀込泰行)
マーチングドラムが先導して、本編はブルージーに進行し、歌詞は何ともアウトロー。こういうサウンドなら間奏はギターソロよりもブルースハープだったらカッコイイのにぃ、とちょっと思ったりして。でもエンディング間近におけるホーンの使い方は抜群です!

■ハピネス(作詞・作曲:堀込高樹)
今回唯一の兄・高樹氏のヴォーカルナンバー。プログラミングからベースまでもを高樹氏が弾いている。クールな打ち込みのリズムにクールなピアノ、そしてストリングスが絡み、歌詞がこれまたクールという、恐いくらいなクールなナンバー。そのクールな歌詞に人間の心の汚れた内側を垣間見る事が出来る。何せ「知るかよ!」「笑わせるなっつうの!」ですから。主人公の男は相当ひねくれているけど、人間ってこんなもんですよね?

■嫉妬(作詞・作曲:堀込高樹)
これ、かなり好きです。昨年末に出たユーミントリビュートにおける「曇り空」に似たサウンドディレクション、そして憂鬱な空気感に近いものを感じる。転調を得意とする高樹氏がここまで音域を限定して曲を作っているのは珍しいかも。でも逆にこの音域の狭さが高揚感を無くし鬱なムードを全開にしているように思う。クラリネットやフルートの音色も印象的。

■the echo(作詞・作曲:堀込高樹)
ここまで疾走感に満ちたキリンジのナンバーは今までなかったんじゃないかと思う。 そして「嫉妬」以上に「曇り空」に似たサウンドディレクション。多分エレピの音がそう感じさせるんじゃないかと思う。これでもか!という程に鳴っているパーカッションにハモンドとエレピの音が重なり、ちょっとジャズの手法を引用しているような気がする(ジャズに詳しくないので弱気に発言)ライブの本編でこの曲が最後だったらかっこいいと思った。(追記:実際本編ラストでした)

■カウガール(作詞・作曲:堀込泰行)
泰行氏によるギター弾き語りによるシンプルなナンバー。だけど、やっぱり重たい...。出口はもうすぐ....。

■スウィートソウル(作詞・作曲:堀込泰行)
本編とはちょっと毛色が違うと楽曲なのでボーナストラックのような扱いで最後に収録。 今回のヘビーなキリンジワールドをようやく抜け出して、最後にフッと軽く甘く締めてお終い、といった感じですかね。またはお口直しのデザート?僕はこの曲、本当に大好きです。

produced by 冨田恵一

forbeautifuljpg.jpg
キリンジ「For Beautiful Human Life」(2004/東芝EMI)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.06.22

AM/EDアーカイブス(1)〜キリンジ武道館公演に行ってきた!

まず最初に・・・。
今回の記事は昨年11月18日に書かれたもので、当時僕がやっていた「ポトフ亭エレクトリックアコースティック」というサイトで公開した11月16日のキリンジ武道館公演の再掲です。今週はキリンジのワーナー時代のシングルベストが発売されるという事で過去に書いたキリンジレビューの再掲、そして最後に書き下ろしレビューを行う予定です。

----------

2003年11月16日。遂にこの日がやってきた。キリンジの日本武道館公演。

kirinjibudokan.jpg

僕にとってキリンジのコンサートはかなり久しぶり。昨年の「AVライブ」や今年の春の渋谷公会堂公演などは都合がつかず行けなかったので 昨年3月の「Fine」を従えたツアーのNHKホール公演以来1年8ヶ月ぶりとかなりのご無沙汰。

5年前、渋谷のクラブクアトロというライブハウスで彼らを見てから、渋谷公会堂、NHKホールと公演通りの坂を登り、次は国際フォーラムかしら?と思ったらまさかの武道館公演。正直キリンジには似合わないと思ったし、客入るのか?という余計な不安までしていた。

開場時間を30分まわった午後5時半、武道館に到着。武道館かぁ、久しぶりだなぁ...。確か1999年に真心ブラザーズのコンサートに行った以来だな。あの時は1Fスタンド席だったけど、今回はアリーナ席。僕は今回、昔からのファンの意地(?)もあり、何ともアリーナ席で見たい!と思いKirinji Infomation Club(ファンクラブのようなもの)に入り、そこからの優先予約でチケットを入手。席は案外簡単に見つかった。す、すごい席だ!。Bブロックの一番前で Aブロックから数えても前から14列目、しかもほぼド真ん中!そしてステージに目を移すとそこには守り神とタツノオトシゴのドでかいオブジェが!(笑)

さてどんな曲をやってくれるのか。基本的に「For Beautiful Human Life」を従えてのツアーなので、そこからのナンバーが中心になるのは当然だけど、1年8ヶ月前に観たNHKホール公演が「Fine」全曲+今まで出したシングルス+αという何ともわかりやすい選曲でコアなキリンジファンの僕としては(自分で言うなって?)ちょっと物足りなさを感じていただけに、ちょっと心配だった。

開演前の武道館にはミニマムな客入れ音楽が流れていた。そして突然客席の電気が消え歓声と拍手が!
オープニングはアルバム冒頭でも強力なインパクトを放っていた「奴のシャツ」で一気に盛り上がると勝手に予想していたが、実際はインディーズのデビュー盤に入っていた「風を撃て」だった。そして「グッデイグッバイ」と誰もが知っているキリンジクラシックス。入口はいつもソフトに。キリンジはいつもやさしい(笑)

最新のシングル曲「カメレオンガール」、当初あまり好きになれなかった曲だったけど、今では♪ディディディ〜ダバダバダ〜♪と一緒に歌ってしまう程大好きに。それに続いたのが「雨をみくびるな」。僕がキリンジにゾッコンとなるキッカケとなった忘れられない1曲だ。この曲を武道館で聴けるとは!!。この曲は僕の旅、ドライブの定番ナンバーでもある。ステージを見つめながらも、頭の中でこの曲と共に訪れた風景を思い浮かべていた。そしてミラーボールが降りてきて「愛のCoda」。歌詞の臭さと相まって近くからは笑いが漏れていた(笑)そして「繁華街」へ続きMCへ。

MCを挟んで新作の中でも大好きな「嫉妬」。高樹氏が作る曲にしては音域が狭い方の曲なので泰行氏が何とも歌い易そうに思えた。この曲のドラムはカッコよかったなぁ〜。キリンジバンドはなかなかの凄腕が揃っており今回も素晴らしい演奏を聴かせてくれた。個人的にはコーラスの真城さんは大ファンだ。続いて「地を這う者に翼はいらぬ 」「ハピネス」と高樹氏による哲学的な曲が続き「エイリアンズ」で僕はようやく着席。はやる心を抑えてようやく落ち着いて聴く事が出来た。

和み系(?)のMCを挟み、高樹氏がクラシックギターを手にし、聞き覚えのあるフレーズを弾き始めた。武道館には決して似合う筈のない、というか明かにライブ向けではない(笑)でも大好きな曲、「OMNIBUS」収録の「まぶしがりや」。この曲も僕の頭の中には明確な映像が浮かぶんですよね。頭の中は白鳥が飛来する氷りのはった冬の湖でした。続いてもOMNIBUSから「来るべき旅立ちを前に」これも好きなんですよね。というか「OMNIBUS」ってアルバムは企画色こそ強いですが本当に好きなアルバムです。続く「ニュータウン」は名盤「Paper Drivers Music」収録でこの曲も「雨をみくびるな」同様いろんな風景を思い浮かべながら聴いて気持ちよくなっていると流れるように最新アルバムからの「僕の心のありったけ」に。歌詞の冒頭が「新しい街の〜(英訳するとNew Town!)」ですから、あぁ、この2曲は繋がっているんだな〜、と一人感動。続く「スウィートソウル」では途中からミラーボールがっ!これがクリクラ!のSPAさんも泣いたというアレかぁ.....。いや、僕も泣きそうになりましたよ、というか、泣いたかもしれない。

しっとりしたナンバーの後、後半戦は熱く燃えるコーナー(泰行氏・談)という事で「アルカディア」から再スタート。コーダの部分はかなりヘビィな演奏に。そして楽器を替える事なく「ブルーゾンビ」。泰行氏のギターソロがカッコよかった〜。そしてここに持ってきたか「奴のシャツ」。演奏カッコよすぎ。その演奏が徐々にフェードアウトしてコーダはコーラスオンリーに。これがまた素敵すぎ。僕はここで一回死んだかもしれない(笑)そしてライブでは定番の「ムラサキ★サンセット」こちらは高樹氏のギターソロカッコよすぎ。盛り上がりも絶頂に。そしてこれが本編ラストだったらカッコイイのになぁと思っていた「the echo」が予想通りのラストナンバーに。パーカッションカッコよすぎ。ひじょうにテンポの早い曲なんだけど、バンドの演奏は乱れる事なくキチッとしている。これはもう職人技です。SPAさんもこの曲が素晴らしかったとクリクラ!で書かれておりましたがまったくの同感です。

アンコールは客電がついた中「銀砂子のピンボール」そして「あの世で罪を受けるほど」とノリのよいナンバーを(僕は後者をいつもチェッカーズみたいな曲だと思っている)。この時僕は思ったのです・・・僕は音楽に愛されている・・・、少なくともここ武道館に集った人たちは今この瞬間音楽に愛されているな、と。この言葉はキリンジのセカンドアルバムに入っている「耳をうずめて」のワンフレーズなんだけど、続く曲がまさかのこの「耳をうずめて」でビックリ!。鼻歌でもうまく歌う事が出来ない程に難しいメロディと難しい歌詞、その昔あるライブイベントで泰行氏がこの曲の歌詞を覚えきれず歌詞カードを見ながら歌っていたのを観たけど、それだけライブ向きではないこの曲をあえてアンコールに用意していただなんて!僕はここでまた死んだ(笑)

バンドのメンバーを先に送った後はキリンジ二人だけによる「カウガール」。心に滲みた。これで本当にライブ終了。

kirinjibudokan2.jpg

選曲はよかったと思う。個人的には「代官山エレジー」を聴きたかったりもしたが「まぶしがりや」と「耳をうずめて」は本当に意外だった。「Fine」ツアーにはその意外性がなかったので.....、そしてあえて「双子座グラフティ」と「牡羊座ラプソディ」を外したところを評価したい(この曲が嫌いな訳じゃないです)

ライブ終了後、武道館を後にするのが何だか辛かった。この瞬間がずーっと永遠に続けばいいのに、と本気で思ってしまった。 会場を後にする人たちは皆清々しい感じに見える。私的な事なのですが、僕は半月前に右手を打撲、そして前日に左足を負傷してしまい、スタンディング状態はかなりツライはずなのですが、この2時間半は手や足の痛みはどこかへ行ってしまい、ライブ終演時に右手の包帯は完全にほどけておりました。音楽って素晴らしい。音楽ってやっぱり愛だと思った。

liveatbudokan.jpg
キリンジ「KIRINJI TOUR 2003 LIVE at BUDOKAN」(2004/東芝EMI/CD&DVD)

※上記DVD収録の「銀砂子のピンボール」に、僕Tuckyがかなり頻繁に映っています・・・(^^ゞ。プロフィール写真(後姿)と同じグリーンのチェックのシャツを着ているのでわかりやすいかと思います。最後の歌詞♪明け方に感嘆符を放つから〜♪は泰行氏(後姿)のすぐ横!(もちろん遠近法で)

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2004.06.20

他人の歌、つじが歌えばつじの歌?・・・つじあやの「COVER GIRL」

また間が空いてしまいました・・・。
いきなり言い訳がましいのですが、僕って音楽を聴きながらじゃないとレビュー作れないタイプなんです。頭の中で音楽を再生できればいいんだけどそれがどうも出来ない。曲を作る人も同じで楽器が目の前にないと作れない人となくてもスラスラとスコアが書ける人がいるらしいですが僕が作曲家なら絶対前者でありましょう。

で、この1ケ月半の間レビューを書かなかったって事はつまり音楽を聴いていなかったって事です。それは本業のお仕事が大変だったという事もあるし、単純に音楽を聴きたいと思わない(思えない)精神状態が続いていたという事もあります。そんな暗雲たちこめる状況に最近ようやく陽が差し込んできました。今回はそのキッカケとなったアルバムをご紹介。

それはつじあやのさんの通算5枚目のニューアルバム「COVER GIRL」。正確にはこれはタイトル通りのカバーアルバム。そういえばキリンジもオリジナル作を4枚出してちょっと企画色の強い「OMNIBUS」を出したっけ。タイミング的には箸休めという感じでちょうどよいのではないでしょうか。そしてこのアルバム、なんと2枚組仕様。といってもドーンとボリュームのある2枚組ではなくコンセプトによって2つに分けている2枚組。1枚はスタジオ録音によるTokyo Side、もう1枚はつじあやのの出身地・京都の各名所でライブ録音されたウクレレ弾き語り。共に収録時間は30分弱。

今回このアルバムに収められた楽曲、つじあやの本人が選んだもの、スタッフサイドが選んだもの、なんとなくわかるのであるが、へぇ〜こんないい曲があるんだ〜、と、とりあえずは素直に感動出来る曲が多かったです。

Tokyo Sideの1曲目「黄金の月」はスガシカオのカバー。何かすっごくいい曲じゃん!スガシカオってぜんぜん興味なかったけどこの詞この曲は素直に感動。そういえば詞の雰囲気が何となく「夜空のムコウ」に通ずるものが・・・。またソフトなリズムのループにピアノとチェロが重なるジャズ風味のアレンジはつじあやの本人によるもの。素晴らしい。手軽なジャズ・・・ポータブルジャズとでも命名しようか。次作オリジナル作では是非セルフプロデュース&アレンジでお願いしたい。

2曲目は昨年のクリスマス商戦のCMソングにもなった山下達郎のカバー「パレード」今更何も言う事はありませんが、つじあやののキャラクターにばっちしハマって見事に成功したカバーの好例。これはスタッフサイドが選んだ曲だろうなぁ。

3曲目はサザンの「シャ・ラ・ラ」ですよ!。つじあやののボーカルがホント原由子っぽくて、そして負けじと奥田民生もかなり桑田佳祐的!。サウンドは基本的にはサザンにも通じるバンドサウンドなんだけどペダルスチールやストリングスが入ってちょっと空気公団やハナレグミの雰囲気が感じられる。
これも多分スタッフサイドが選んだんだろうな。サザンのTAISHITAレーベルはイコールつじあやのの所属するスピードスターレコーズだしね。サザンって本当はあまり好きじゃないんだけどこの曲は姉がよく聴いていた事もあって知っていていい曲だなぁ、とずっと思ってました。この選曲には拍手!最高!!文句なしに今回のベストトラック。

4曲目「Never Can Say Goodbye」はジャクソン5のカバー。これはまったく知らなかったですがこんないい曲があったんですね〜。続くキャンディーズの「年下の女の子」は何とカントリーアレンジ。これが意外にハマッている。

ブルーハーツの「ラブレター」はつじあやの本人による(つたない)ピアノ弾き語り。つじあやのもかなり強い個性で歌っているが僕にはどうしても甲本ヒロトの姿が消えない。以前矢野顕子さんが友部正人さんの「愛について」をカバーする際、友部正人の歌は彼自身の姿が強く反映しているので歌うのが難しいと言っていた事を思い出した。確かにあの矢野さんが歌っていても友部正人の歌声が想像つくのだ。友部正人にしても甲本ヒロトにしても誰にも真似できないような歌を真似できない声で歌っているからいくらいい曲でもカバーする側は自分のものにするのが難しいのかもしれないな。

矢野顕子の話が出たのでついでに言うと彼女は自分の最たるオリジナリティである“ピアノ弾き語り”で他人様の曲をカバーしそれを自分のものにしてしまうという“技”でオリジナリティに更なる磨きをかけた。そしてつじあやのもその方法論に習い彼女の強力なオリジナリティの一つである「チープなウクレレ弾き語り」で他人様の曲をカバーし、しかもそれをつじあやのの地元京都の各名所でライブ録音したのが“Kyoto Side”。ただここには矢野顕子のような“緊張感”はなく聴く側も聴かせる側もただただリラックスしていると思います。これがかなりの良い雰囲気の中で録音されていて特に鴨川土手(!)で録音のスピッツ「チェリー」や法然院(!!)で録音の西岡恭蔵「プカプカ」などのアウトドアレコーディングは雑踏などはもちろん、よーく聴くと水の流れる音やカラスの鳴き声まで入っていて(笑)ある意味抜群の環境下(?)で録音されております。

このKyoto Sideで僕が一番好きなのはラストに入っている井上順の「お世話になりました」・・・う〜ん、この曲は知らなかったけど、こんなステキな曲があったんだね。これは是非オリジナルを探してみいてみたいなぁ。あと有名どころでは「別れても好きな人」が入っている。これはちょっとキンモクセイ的狙った感(?)があるけどウクレレとの相性はなかなかよい。

先程言ったようにこのアルバムは2枚組なんだけど、僕のiTunesのプレイリストには、Tokyo SideとKyoto Sideの楽曲が交互に入っている。こういうミックスした聴き方もなかなか面白いかもしれない、と言っておこう。

covergirl.jpg
つじあやの「COVER GIRL」(2004/Speedstar Records)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.04.29

笑っているときだけ? 高橋幸宏「...ONLY WHEN I LAUGH」

今日は高橋幸宏の86年作「...ONLY WHEN I LAUGH」について綴ろう。

82年にYMOチルドレンとなった僕の当時好きだったメンバーの順は坂本→幸宏→細野だった。
それがYMO散開後は幸宏→坂本→細野となり、今は細野→幸宏→坂本となっている。
もちろんこの差はホントに僅差なもので、3人とも大好きな事は変わりない。
で、今日はお話する「...ONLY WHEN I LAUGH」は幸宏さんに夢中だった頃にリリースされた作品。

84年、細野さんが「ノンスタンダード」と「モナド」を、坂本さんが「ミディ/スクール」というレーベルを設立し、それに遅れる事1年、幸宏さんもムーンライダーズと共にポニーキャニオン内に「T.E.N.T」レーベルを設立、「...ONLY WHEN I LAUGH」はそこからの第2弾としてリリースされた。

後々の幸宏さんのインタビューなどを読むとこのT.E.N.Tレーベル時代はいろいろ苦労があったらしく、レーベルを旗揚げした以上、その責任感というか「売らなきゃいけない」というプレッシャーが強かったという。売れるものとは、つまりポップなもの、万人に受け入れられるものという事だと思うのだが、T.E.N.Tに残した2枚(「...ONLY WHEN I LAUGH」とその前作「ONCE A FOOL,...」)は確かにポップな音作りだ。これでは従来のYMOチルドレン達には物足りなさを感じるかもしれないし、T.E.N.T設立前ダンスミュージックに傾倒した「WILD & MOODY」(84年)やT.E.N.Tを辞め東芝EMIに移籍しての「EGO」(88年)など前後の作品と比べても緊張感は感じられない。しかも当時幸宏さんのスポンサーとしてを強力にサポートしていたのがCASIOのシンセサイザーでこれが何ともチープな音色を作り出していた事も否めない・・・。(今聴くとなかなかいい味を出していると思いますが)

しかし!僕はこのT.E.N.T時代の作品がとても好きなのであります。YMOのポップな側面を担当していたのは幸宏さんだと思うし、その幸宏さんが最もポップなものに傾倒していた時期の作品とよく言えばそういう作品だと思う。特に「...ONLY WHEN I LAUGH」はボーカルもいいし、英語詞と日本語詞も半々でバランスがよい。そして注目すべき点はモータウンっぽものやソウルっぽいもの、ロックっぽいものもあったりするが、それらをすべて“テクノで消化している”事・・・これはやっぱスゴイと思いますよ。レコード会社のプレッシャーが結果よい形になったのでは?と僕は評価します。あっ、それとジャケットがすごく好きです、このアルバム。

僕はむしろその後にやってくる東芝EMI時代というのがあまり好きじゃなかったです。東芝時代の作品の方がレコード会社の意向などがリスナーの立場からも垣間見れていたと思う。幸福三部作(だっけ?)とか最初の頃はよかったけど、東芝末期は聴く立場としてもちょっと厳しかったです。

その後幸宏さんは自ら設立していたインディーレーベル「コンシピオ」に正式に移籍。コンシピオ移籍第一弾のミニアルバム「A Sigh of Gohst」は久々に弾けた幸宏さんを聴く事が出来てうれしかったです。そして数枚のソロ作品をリリースした後現在のスケッチショウに至る訳ですが、ソロ活動を封印するには絶対に勿体ないよ。スケッチショウは来年もう一枚アルバム出すみたいだけど、今年は幸宏さんも細野さんも久々にソロアルバム出してほしいと切に希望します。

owil.jpg
高橋幸宏「...ONLY WHEN I LAUGH」(1986/PONY CANYON・T.E.N.T.)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.04.20

「融解」〜空気公団・空風街ライブ

今回ははじめての試み、ライブレビューです。僕のもう一つのBlog「Drifting Away」で綴ったものと同内容です。

------------

僕にとっては第一期空気公団最初で最後のライブ。

今回ライブに出向くのは昨年11月のキリンジ武道館以来5ヶ月ぶり。昔は東京で仕事をしていたので乱発的にいろんなライブに足を運んだけれど横浜の僻地で働く今はそんな事は出来なくなった。本当に行きたい、聴きたいと思えるライブしか行かなくなった。あと極力土日開催のね。

今回の空気公団の「空風街ライブ」はそのまさに“行かねば!”と思った特別なライブ。一般プレイガイドではなくわざわざ手数料のかかるイープラスの先行予約を利用した。ケチケチの僕がそこまでしてまでも絶対に見なければならないと思ったライブだった。そして幸いにも日曜日の開催・・・(平日でも休みを取って行ったでしょう。)

少し早めに夕食を済ませ開場15分前に会場の渋谷クラブクアトロに到着。クアトロはよく行くライブ会場だ。キリンジをはじめてみたのもこの会場だった。僕の整理番号は300番代だったのでしばらく会場の外で待つ事に。まわりのお客さんは案外フツーの人が多かったように思えた。(もっと渋谷系っぽい人が多いのかと思っていた)

開演予定時刻から約10分が過ぎた頃、空気公団が登場。一人、二人、三人、四人・・・えっ?次から次へバンドメンバーがステージに。総勢10名の空気公団の住民たち。しかもツインドラム。空気公団の音楽は意外にドラムの音がパワフルなんですよね。

1曲目「夕暮れ電車に飛び乗れ」。あぁ、あの声だ!あの声で歌っている!、あれが山崎ゆかりなんだー。山崎さんは普段眼鏡っ子なんだけどこの日は眼鏡なしで淡い色のワンピースを着衣。眼鏡かけてるがり勉タイプの女の子が眼鏡外して少しお洒落して実はかわいかったんじゃん!と思える瞬間(?)に近いものを感じた(すみません、バカで・・・)。そしてこの1曲目にはゲストにタムゲン(田村玄一)さんのペダルスチールが加わり哀愁感抜群。クアトロに居る筈なんだけど、どこか郊外の駅のホームにいるような錯覚に陥る・・・。

続いて「わかるかい?」ドラムのカウントに続き山崎さんの第一声からはじまるこの曲を、山崎さんは緊張していたのか歌い出しを失敗。山崎さんかなり緊張している様子。

第一期空気公団を締めくくる今回のライブのメニューはほぼすべてのアルバムやシングルから満遍なく選曲されていたのではないでしょうか。ゲストにキマタツトムを迎えての「白」という曲はアルバム未収録曲ながら空気公団歴代3本の指に入る程に好きな曲だ。七尾旅人もステージに登場し「音階小夜曲」「旅をしませんか」で色を添えた。

本編最後(アンコールだったかも?)、ピアノによる「夕暮れ電車に飛び乗れ」のインストをバックにメンバー三人がご挨拶。今回のステージでバンドを去るオルガンの石井さんは涙涙にご挨拶・・・これからはリスナーとして空気公団を応援していきます、と。ベース、ギターの戸川さんはしっかりと挨拶(やっぱこの人がバンドを纏めていたんだろうな)、近いうちに何らかの形でまた音楽を届けたい、と。山崎さんは終始かなり緊張していた様子で、最後の方には放心状態になっておりましたが、「またいい曲が書けそうな気がします」と淡々と挨拶。山崎さん、淡泊な人だなぁ・・・。

そんな山崎さんも何も用意していない予定外のアンコールではオーディエンスからリクエストを募るなど、かなり緊張も解れてきた様子。でもリクエストされた曲は結局「出来ない」という事で(笑)本編でアコースティック編成でやった「レモンを買おう」のバンドバージョンという事に。これで本当にお終い。

天井には9体の気球がぶらさがっていた。またステージ横にはスクリーンが設置されそこに映し出されるイラストとの絵描き歌連動(?)があったり、空気公団らしい工夫が随所に折り込まれていた。(この気球は今週いっぱい開催されている展覧会でも飾られるという。)空気公団のライブはただ音楽を届けるだけでなく、“空間”を提供していたんだな。その空間に僕は居る事が出来て本当に幸せだ。本当にどうもありがとう。

| | Comments (4) | TrackBack (1)

2004.04.18

個人によるバンドの構築〜ムーンライダーズ「ANIMAL INDEX」

ムーンライダーズの28年(!)にも及ぶ活動の中において、僕が一番熱くなれた時期が84年から86年の3年間だった。僕は84年の「AMATEUR ACADEMY」からがリアルタイムなので一番最初の3年という事になります。87年から5年間は活動休止期間に入っちゃいましたからね。

今回は84年発表の「AMATEUR ACADEMY」と86年発表の「DON'T TRUST OVER THIRTY」という2枚の“強名盤”に挟まれた「ANIMAL INDEX」という“弱名盤”をご紹介。

「AMATEUR ACADEMY」で外部プロデューサーを迎えてバンドとしてのあり方を再構築した後、この「ANIMAL INDEX」ではその反動かメンバー各6名がムーンライダーズを2曲ずつ別々に録音するという手法が取られました。この手法については当時批判的な声もありましたが僕としてはかなり受け入る事が出来たのです。それはどうしてか・・・?

突然ですが、僕という男はですね、他人との共同作業というか、自分の作ったものに他人が手を加えてくれる事とかがヒジョーに苦手な“自己完結”な人間なんですよ。その反面誰かと一緒と何かを築きあげたいとう願望もあって・・・何だかすごく矛盾した発言のようなんですが、要するに何か一つのものを作る時、皆横一列に並んで一緒に作るよりも、ある程度分担制にしてくれると助かるのです。

この「ANIMAL INDEX」ってアルバムは録音こそ分担していますが、各メンバー、最終的には“ムーンライダーズのオリジナルアルバムを作る”と意識する事によって、また基本的に鈴木慶一がすべて立ち会う、動物というキーワードを設ける事でバンドとしての、一枚のアルバムとしての更なる統一感を持たせています。

また、この「ANIMAL INDEX」は実質的にバンドとしての録音でないにも関わらず後々ライブでも定番となるような名曲が粒揃いに収録されている。CDで言う8曲目〜10曲目、暗くサイバーな雰囲気漂う鈴木慶一・岡田徹コンビの「夢が見れる機械がほしい」、ムーンライダーズにしてはちょっと珍しいアグレッシブなリズムが楽しいポップチューン・・・かしぶち哲郎の「Frou Frou」、文学の香り高き鈴木博文の「駅は今、朝の中」がそうであろう。

ちなみにムーンライダーズはこのソロ録音方式(但し鈴木慶一の立ち会いはなしで、更にやりたい放題)とバンド録音方式半々で次作「DON'T TRUST OVER THIRTY」を制作。バンドで録音されたものはギターがうねるロックサウンド、岡田徹、鈴木博文、武川雅寛の楽曲はポップな感じに、そして白井良明、鈴木慶一、かしぶち哲郎の楽曲はかなり実験的。これがまた名盤。同じ録音方式では90年代中盤に「ムーンライダーズの夜」というアルバムがありました。これもかなり好き。

ムーンライダーズはバンドとしての常識を覆すような録音方式を他にもまだまだとっている。92年作「A.O.R.」はバンド内で商業的に成功している白井良明と岡田徹の二人をプロデュースに迎え他のメンバーはほとんど録音に参加しないなんてとんでもない作り方をしているが、これには僕もちょっとなぁ・・・と思いました。また98年作「月面讃歌」はバンドによる生の録音を全曲第三者にリプロダクションを依頼するというこれまたとんでもない手法が用いられ、これには賛否両論バシバシでしたが、僕は「賛」でしたよ。生の録音は後に「Discoverd」というタイトルで出ましたしね。あと「Six musicians on their way to the last exit」なんてアルバムもありましたがこれは完全にソロの集合体ですね。バンドじゃない。好きにもなれないけど、まぁ企画アルバムという事で捉えてます。

ムーンライダーズ、さて次はどんな手法を使うのだろう?

animalindex.jpg
ムーンライダーズ「ANIMAL INDEX」(1985/PONY CANYON・T.E.N.T.)

※「Acousitc Machine/Electric Dream」とは、ムーンライダーズが99年に行ったライブのタイトルからいただきました・・・。感謝!

| | Comments (0) | TrackBack (2)

2004.04.13

雨の降る日には 〜オフコース「ワインの匂い」

今日もまた雨が降っている・・・。

何の予定もない雨の日には、オフコースの「ワインの匂い」・・・このアルバムが聞きたくなる。 

僕はオフコース、とりわけ小田和正の激しく屈折した女々しい男の歌が実は結構好きだ。シングルにもなった「眠れぬ夜」なんて、ここまでいじけた男の感情を恥ずかしげもなくよく書けるかと思う。(ちなみにこの曲後に西城秀樹がカバーしてリバイバルヒットしたけれど、西城秀樹のイメージとはこれっぽっちも合わないと思う・・・)

でもこんな屈折した愛の歌ばかり40分も続くとなるとこんな僕でもちょっとうんざりしてしまう。そこに鈴木康博のそこそこポジで男性的な楽曲がよいバランスとなっている。結果、名盤と語り継がれているのではないかと。

ただ、小田の屈折した面と鈴木のポジな面、その“互いの徹底ぶり”はどう考えても小田の方が勝っている。今こうやって書いている自分でさえも小田を屈折とした事には自信あるが、鈴木をポジとした事にはちょっと自信がないのだから・・・。そこから考えてもオフコース=小田和正という認識が出来てしまったのではないであろうか。

そして最後に入っている「老人のつぶやき」・・・これは反則でしょ(笑)こういうの弱いんですよ。老人とか子供とか出されると・・・。でもこれは素晴らしい愛の歌だと思いますよ。僕も若い頃に戻りたいなんて思った事一度たりともありませんけど振り返ってみると心残りというか未練がましい事は多々ありました。まだ老人って年じゃぜんぜんないけれど、かなり感情移入しちゃいます。そしてこの曲のコーダ部分に入るストリングスのリプライズは何か意味深なものを表しているように思いました。ここで何かは言いませんが、結構みんなわかっているんじゃないでしょうか?

アルバム全体を通して、バンドサウンド確立前夜のシンプルな演奏、そしてストリングスの多用は30年近く経った今ではソフトロック的に捉える事が出来ない事もない(??)。

wine.jpg
オフコース「ワインの匂い」(1975/東芝EMI)

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2004.04.11

冷たいようで暖かい?〜ハナレグミ「日々のあわ」

ハナレグミのセカンドアルバム「日々のあわ」

ファーストアルバム「音タイム」もそうだけど音数の少ないアルバムだ。いや、音数が少ないというよりも、そこに必要な音しか入っていないという事か。決してフォーリズムが基本ではない。まぁそれがハナレグミであってSuper Butter Dogとの差別化でもあるのだけれど。その“必要な音”を選定したのがリトルクリーチャーズの鈴木正人、ワールドスタンダードの鈴木惣一朗、そしてハナレグミ。つまりプロデューサーだ。そして“必要な音”を出した人の中にはクラムボンやポラリス、リトルクリーチャーズのメンバーらが含まれている。

そしてここで注目したいのは高田漣というペダルスチールギター奏者の存在。この「日々のあわ」では半数の楽曲で高田漣のペダルスチールの音を聴く事が出来る。(高田漣はあの高田渡の息子さんですね、参考までに・・・)

ペダルスチールという楽器は不思議な楽器だ。和田弘とマヒナスターズのイメージからか最初はハワイアンで使われる楽器というトロピカル(?)なイメージがあったのだが、その反面北欧エレキインストなどでも使われている。寒暖の差が激しい楽器だ(笑)。そして70年代のフォークやロックでもよく使われていたし、また最近ではハナレグミの他に青山陽一や昨年秋のキリンジのツアーなどでも使われていた。ペダルスチールが入ると独特の哀愁感が漂うのである。

「日々のあわ」の中で僕が一番好きなのは「ステルトミチル」という曲だ。
歌、ギター、ピアノを核として、サビに向けてペダルスチールやユーフォニウム、チェロなどが傾れこんでくる展開にはホント震えがくる。ナタリーワイズのBikkeの歌詞も含めて、冷たいようで暖かい、暖かいようで冷たい、何とも不思議な感触のある楽曲だ。(ある意味ナタリーワイズ的であります)

この「ステルトミチル」や最後に入っている「MUSICA」、先行シングルのカップリング「ハンキーパンキー」などで得られるこの感触は、昔聴いた何かに似ているぞ?・・・少し考えてみた・・・案外すぐに答えがみつかった。それは「はちみつぱい」だ。ムーンライダーズの前身のあの「はちみつぱい」。といっても「塀の上で」や「センチメンタル通り」といった鈴木慶一のはちみつぱいではなく、「通り静か」や「僕の倖せ」といった渡辺勝のはちみつぱい。はちみつぱいにも駒沢裕城というペダルスチール奏者がいたし、ハナレグミの声質も鈴木慶一よりは渡辺勝寄りだと思う。

さぁ、恒例の深読みの境地に入ってしまいましたので、このへんで元に戻ることとしましょう。この「日々のあわ」には他にも小泉今日子に提供した「きのみ」のセルフカバー、ホーンが暖かい先行シングル「レター」、言葉遊びもおもしろい軽快でファンキーなカントリー風ナンバー「嘆キッス」、歌詞がちょっと涙してしまう「さらら」など、とにかく捨て曲はないです。「音タイム」も素晴らしかったけど、この「日々のあわ」もまた最高。

最後にこのアルバム、ミックスがすごくいいんですよ(前作もそうでしたが)。楽器とマイクとの間の空気感までをも味のあるいい効果にしてしまっているんです。それはドラムやパーカッションの音で忠実にわかるかと思います。

しかし「家族の風景」は何度聴いても泣けるなぁ・・・。

hibinoawa.jpg
ハナレグミ「日々のあわ」(2004/東芝EMI)

| | Comments (2) | TrackBack (1)

«リアルタイムのはっぴいえんど